大人の欲望の対象には、お金や物のほかに、名誉や権威といったものもあります。
なぜ一部の人がそういった名誉や権威を欲するのでしょうか。
いくつか理由は挙げられると思いますが、そういった名誉や権威は他人への影響力が大きいことがあげられます。
現実的に、『社長』とか『教授』などの肩書がつくだけで、他人から『ちやほや』されがちなことは、キャバクラ嬢じゃなくても、知ってます。
自尊心が強い人なら、仮にそれが、『お世辞』だと分かっいても、周囲からちやほやされることに悦に入ってしまうことでしょう。
ただ、その程度であれば、まだ可愛いげがあるかもしれませんが、厄介なのは、そういった権力や肩書の力を借りて、理不尽なことを他人に要求したり、押し付けたりする人です。
ビジネスでは、会社という組織の特性を考えると、多少の無理はあるかもしれませんが、そういうタイプの人が中長期的に周囲の人に好かれ、慕われるとは思えません。
むしろ、パワハラやセクハラが社会的にも大きな問題になるように、一昔前まで問題視されなかったこともそうではなくなりつつあります。
ビジネスをスピーディーにすすめるには、ときとしてスタッフに無理な仕事をお願いする場合や犠牲を払う必要がありますが、権力や肩書を傘にした理不尽きわまる行動や言動は控えたいものです。
身近な例から一つ。
私が在籍したある上場企業の社長は、とにかく「権威」に弱く、何かのプロジェクトが動くたびに、スタッフから外部の企業までネームバリューをひたすら気にしていました。中でも外資系への「弱さ」は周囲も驚くほどでした。
確かにネームバリューがある人や企業はそれなりにコストはかかりますが、パフォーマンスはそれなりに期待できます。
ただし、現実的には、ビジネスの成功の可否を決めているのは、それだけではありません。
そのプロジェクトそのものが競争力を持っているかどうかです。
コストとバリューを天秤にかけたとき、結果的にバリューがコストを上回れば、成功と呼べるかもしれませんが、それは外資系だからとか、国内の企業だからということではないはずです。
それが最も裏目に出てしまったのは、その社長が、ある大規模な社内システムの導入にあたり、複数の企業からの入札を受けたときでした。
発注金額の大きさから国内外の企業あわせて10社以上の入札がありましたが、当初は同業種でも実績のある国内大手企業中心に話は進んでいたのですが、なんと急転直下、社長の一声で国内での実績が未知数の外資系のシステム会社に依頼することになったのです。
当初は、役員会でも実績が未知数とはいえ「外資系大手」だから大丈夫だろうなんて思っていたのですが、仕事が始まってみると、案の定・・・これまで取引があった実績のある国内大手とは大違い・・・。
その対応に苦慮し、当初の予定より大幅に遅れが生じた結果、なんと発注した外資系と直接取引するのは難しいとの結論に達したのです!
最終的には、外資系→国内大手システム会社→発注元企業という流れで着地しまして、当然ですが、当初よりも大幅にコストが上昇することになってしまいました。
さらにこれだけではありません。新システム導入以前に使用していたシステムの基本的なシステムが使用できなくなる!という前代未聞の新システムがダウングレードするということになってしまったのです!
何ということでしょうか・・・。システム導入のコストが膨れ上がっただけでなく、システムの機能もダウングレードという信じられないような結末に至ったのです。
外資系だからと言って、盲信している人も危険ですが、権威やネームバリューに憧れるあまり、本質を見失うというのも本当に危険です・・・そんな人たちが周囲から好意を集められるはずがありませんよね・・・。