人に好かれる話し方には様々な要素がありますが、ここでは、声のトーン・声色について考えてみたいと思います。
人の第一印象は、話の中身が30%、残りの70%が非言語コミュニケーション(ボディランゲージやその人の見た目など)で決まると言われていますが、中でも声のトーンや声色は話の内容とは別に、コミュニケーション上、極めて重要と言えます。
人は会話の内容の是非に関わらず、話し手の声のトーンに敏感に反応します。例えば、有名なキング牧師の演説やオバマ大統領の演説を聴いた人たちは何を感じるでしょうか?
例えば、勇気、刺激、興奮、明るい未来、開放、心の声、熱い思い、感動・・・。
英語が分からない人でも、彼らの演説を耳にすれば、きっと何かアツイものを感じずにはいられないことでしょう。
逆に、話の内容が何であれ、声のトーンが低く、弱弱しいものなら、
失望、不信、落胆、暗澹、無関心、自信のなさ・・・など
ネガティブな印象を与えるでしょう。
ここで重要なことは、話の内容以上に、「声のトーンが重要」であることを認識することです。
これは、何も大勢の人前で話す場合に限りません。
恋人と過ごす日常やごく親しい間柄の友人、同僚の間でも、とても重要です。
例えば、毎日のように接している人の「おはようございます」を一つ取ってもみても、
今日は○○さん、何だか元気なさそう・・
今日は○○さん、今日はピリピリしてそう・・・
今日は○○さん、とっても機嫌よさそう・・・
と感じ方が違ったりしたことは誰にでも経験があるでしょう。
こうした事例が示すことは、
言葉で説明するよりも、声のトーンを調整した方が相手の心を動かす重要なコミュニケーションになり得るということです。
情報化社会になっても、人間が処理できる情報に限りがあるばかりか、むしろ、人は許容以外の情報量を与えられた場合は、情報を遮断してしまうということが心理学的にも多くの実験で証明されています。
また一方で人間は感情的な生き物であり、動物でもあります。
つまり、理性的に話の内容を察知するよりも、直感的に感情的に、その人の声のトーンから、その人の調子や意図を判断しがちであるということです。
大げさな言い方になるかもしれませんが、伝えたい話の内容によって、声のトーンを調整するだけで、コミュニケーション能力は目に見えて向上します。
例えば、声のトーンをやや控えめに抑えながら、少しゆっくりと話をすれば、相手に少なからず、安心や冷静であることを伝えられるはずです。
また、早口で声のトーンを高めに話せば、それは相手にあせりや緊張などを伝えることでしょう。
また、声のトーンを低く、途切れ途切れに話せば、相手には「話したくない」ということが伝わることでしょう。
また、声のトーンを高めに簡潔に話すことを心がければ、自信や誠実さが伝わることでしょう。
上で述べたようなことは、自分が意識している、自分が意識していないに関わらず、会話の相手が実感するというところがポイントです。
つまり、自分には、そんなつもりがないけど、声のトーンで誤解されることもあるということです。
たまに、生まれつき声が低かったり、あえて低い声で話そうとする男性がいたりしますが、そうした男性は意識していない、意識しているに関わらず、相手は自然と「重さ」を感じたりします。
会話の相手に、「重さ」や「話し辛さ」を声のトーンなどで伝えてしまうことは、「話しかけられにくい」という点で、結構、「損」だったりします。
場合によっては、「声が低い」→「わざと?」→「ナルシスト?」になりかねません・・・。
そんな風に思っている男性は少ないかもしれませんが、重要なことは、本人がそう意識している、意識していないに関わらず、会話の相手が「そう感じてしまう」ことです。
ただ、そうした例があるということは、人に好かれる、声のトーンや声色もあるということです。もちろん、万人に受ける声色というのは存在しないと思いますが、場所や相手、状況などによって、いろいろと試行錯誤を重ねることは非常に価値あることだと思います。