テクノロジーやネットで情報の伝達スピードがどれだけ発達しても、自然科学や社会科学で合理的な行動の方法がどれだけ研究されても、人間が止められないものの一つが、「好きになってはいけない人を好きになってしまう」ということではないでしょうか。
好きになってしまった人にすでに恋人がいたり、あるいは、既婚だったりといったパターンですが、源氏物語からシェイクスピア、そして、現代に続くまで、「好きになってはいけない人を好きになってしまう」という禁断の恋の物語は世界中で起こっています。
「好きになってはいけない人を好きになってしまうこと」そのものを周囲の人が断罪するのは簡単なことですが、当事者からすれば、「たまたま好きになってしまった人が、そうだった・・・」という感じだったり、「そんなつもりはなかったけど、いつの間にか心が惹かれてしまって・・」という感じで、自らあえて危険な恋を選んだわけではないという人がほとんどだと思います。
だからと言って、「好きになってしまったから、後は野となれ山となれで、突き進めばいい!」ということを筆者は決して推奨するつもりはありません。
ただ、好きになってしまったその気持ちに対して、どのように向き合うべきなのかということは、自分なりに考えておいた方がいいというのが、筆者の考え方です。
この場をお借りして告白させて頂きますと、かつて筆者も「好きになってはいけない人を好きになった」経験があります。
今回は、その経験をもとに、どのようにその恋心に向き合い、そして、どのようなことを考え、そして、最終的にどのような結論を得たのかということを、説明していきたいと思います。
1.好きという気持ちを生んでくれたことに感謝
10代や20歳前後の若いときは別として、社会経験や恋愛経験をそれなりに重ねて、30歳前後を迎えるようになると、男女問わず、「好き」と思える異性にはなかなか巡り合うことがない・・・という方が多いのではないでしょうか。
もっと言えば、若いときから「好き」と思える異性に出会えることがなかったという人も少なくありません。
そんな状況にありながら、許されない恋とは言え、相手のことを自分の本心から「好き」と思える人と出会えるのは、本当に素敵なことだと筆者は思います。
そんな風に考えますと、どれだけ許されない恋であっても、まずは「好き」という気持ちを生んでくれた相手や環境に恵まれたことに対して、感謝の気持ちをしっかりと心に刻みましょう。
好きになってはいけない人を好きになってしまうと、時々、「こんな苦しい思いをするなら、出会わなければ良かった・・・」なんて気持ちが、心を揺さぶり、状況をネガティブに捉えてしまうことがありますが、それは、あまりにも悲劇的な考え方を自分に強いてしまっています。
どんなに苦しくとも、少なくとも人として「好き」という感情を抱かせてくれたことには感謝すべきですし、人を好きになるということは、人間として極めて自然なことなのですから・・。
2.どう”なりたい”よりも、どう”ありたい”のか
好きになってはいけない人を好きになってしまうと、日々、相手とのさりげないアイコンタクトやメッセージのやりとりの中で、様々な感情が巻き起こります。
「なんだか、今日は優しい・・もしかして・・・」
「急に冷たい対応・・・嫌われた・・?」
「なんかよそよそしい・・・もしかして気持ちが伝わってしまった・・?!」
許されぬ恋をしているからなのか、あるいは、それほど相手に対して夢中になっているせいなのか、些細なことで一喜一憂をしてしまいます。
そして、その延長線上にあるのが、「一体、自分はこの人とどうなりたいのか?」ということを悶々と考え続ける日々です。
「誰も傷つかないで、奇跡的にハッピーな展開にならないかな・・」
「いっそのこと、自分のことを嫌ってほしい・・・」
「秘密の恋のまま・・・」
しかし、残念ながら、筆者自身の経験や周囲の経験を見る限り、”こうなりたい”という気持ちが実現することはほとんどありません・・・。
もちろん、その願いが叶った例もあるでしょう。
しかし、数は極めて少ないというのが、現実ではないかと思います。
筆者自身、好きになってはいけない人を好きになってしまったときは、「自分は一体、どうなりたいのか?」と何度も自問自答を繰り返しました。
しかし、そんな自問自答は結局、心の中をさまよい続けるだけで、答えらしい答えを見つけることは、決してできませんでした。
その代わり、気持ちを楽にしてくれたのが、”どうありたいのか”という考え方でした。
先々「どうなりたいのか?」ばかりを思い悩むよりも、本心から好きだと思える人に出会い、そして今、相手のことを想える「現在」があることに目を向けたのです。
「今以上、自分はこの状況より、さらに何かを求めるのは傲慢じゃないのか?」
そして、いつしか、こんな風な考えに至ったのです。
もちろん、心の片隅では、何かのタイミングで、状況が好転したりすることを望んだりもしましたが、上記のような考え方をするようになってからは、少し心の平安を取り戻すことができました。
好きになってはいけない人を好きになってしまうと、気持ちが焦ったり、思いが募るあまり、「どうなりたいのか?」をついつい考えてしまいがちですが、まずは「どうありたいのか」を考えることで、少し気持ちが落ち着いたり、楽になるかと思います。
3.本気で相手のことを想うなら、ひたすら待つしかない
筆者の身の回りで、好きになってはいけない人を好きになってしまい、そして、その人とハッピーな結末を迎えた人はほとんどいませんが、数少ないケースの中から、一つのケースを紹介したいと思います。
2人は、もともと学生時代に付き合っていたのですが、彼が大学進学で地元を離れてしまい、遠距離恋愛となってしまった結果、程なく、若かった2人は分かれてしまいます。
そして、彼女はその後、地元で短大を卒業後、職場で知り合った男性と結婚してしまいます。
男性の方は、実は遠距離恋愛となり、別れてしまったときの原因の多くが自分にあったことは分かっていましたが、復縁したいと言い出せないまま、様々な女性と付き合っては、別れることを繰り返していました。
筆者も何人かの女性を「彼女」として紹介されましたが、彼が学生時代につきあって、今はもう結婚している彼女のことが忘れられずにいることは、見て取るように分かりました。(なぜなら、付き合っても半年程度で別れてばかりだったので・・・)
筆者は何度か、「もう彼女は結婚したんだから、別の人と結婚を考えたら?」なんてことを言ってみましたが、彼の答えはいつも決まって、「そんなんじゃないから」という、どっちとも取れる答えに終始していました。
そして、気がつけば、もう結婚してしまった彼女のことを想って10年以上が経過したときに、地元の何かのパーティで、たまたま彼と彼女が再会する機会がやってきたのです。
お互いの近況を話しているうちに・・・、彼女の方はなんと「今の旦那とは別居状態で、結婚を何となくで決めたことを後悔している、心の中にはずっと彼がいた」、彼の方は転職して、職場は変わっていたものの、独身で「彼女のことをずっと想ったまま」ということをお互いが知ることに・・・。
その後は、信じられないようなスピードで、”コト”が進み、あれよあれよという間に、彼女は離婚、そして、二人は結婚にまで漕ぎ着けました。(ちなみに、彼から念願かなって彼女と結婚すると伝えられたとき、筆者はまるで自分のことのように嬉しく、感極まって人目もはばからず、涙してしまいました・・)
そこに至るまでに掛かった時間、彼女の状況、再会のタイミング、彼女の方には子供がいなかったこと、などなど、様々な偶然が重なり、ゴールとなりましたが、彼がずっと待っていなければ、こんな結末にはなっていなかったと思います。
筆者の周囲で現実にここまでたどり着いたのは一人だけで、あとは、どんなに恋い焦がれて待てども、何も起こらなかった人や、不倫していた人が離婚したけど、分かれた途端、フラれたり・・・、親友の恋人を好きになってしまって、ドロドロの三角関係の後、人間関係も縁も切れてしまったり・・・といったケースばかりでした・・。
4.Next Life Time
好きになってはいけない人を好きになってしまうと、その先に待っている展開は、残念ながら、ほとんどのケースで想いが叶わぬ「ツライ恋」です。
辛くてもひたすら、想いが叶うまで待つというのも一つの生き方ですし、また、相手のことを好きになれたことに対して感謝をし、そして、その人と何らかの接点がある今の状況のまま、つまり「現状維持」という生き方も一つだと思います。
ただ、中には、独身の方で、「勇気を持って次の恋をしたい」、あるいは、既婚者の方で、「この恋は終わりにしたい」という人もいるかもしれません。
そんな方に向けて、筆者が好きになってはいけない人を好きになってしまった後に、最後の最後にたどり着いた言葉を紹介したいと思います。
それが、「来世でまた会って、そのときは恋が実るように・・・」という言葉です。
好きになった人を忘れる必要なんて、筆者はないと思っています。ましてや、許されぬと分かっていながら、燃やした恋心です。
現世で上手くいかなったのは、運命のイタズラに過ぎず、来世では、きっとこの恋が成就するはずと思うことで、筆者は新しい一歩を踏み出すことができました。
今は、そんな言葉では、この気持ちは抑えきれないという方もいらっしゃるかもしれません。
それはそれでいいと筆者は思います。
いつか、自分の気持ちが前に進み、そのときに、そういえば、ネットで「こんな記事があったなぁ」と思い出して頂ければ・・・。
読者の方の恋が上手くいっても、いかなくても、筆者はここまで読み進んでこられた方へ感謝と敬意を込めて、エールを贈りたいと思います。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。