筆者はこれまで、国内外の様々な企業を渡り歩いてきましたが、その過程で経済的にも時間的にも豊かな人々とお会いする機会にも数多く恵まれました。
彼らには筆者が唸らされるような特徴が幾つかありましたが、その中でもいわゆる「お金持ち」を分析した本では、あまり見られないような特徴を肌で感じたところで説明させて頂きたいと思います。
※筆者の個人的な主観による記事ですので、必ずしも、統計的な裏付けがあるわけではありません。しかしながら、筆者がここに紹介するトピックスは、決して万人に向けた内容ではありませんが、複数人に共通して見られた特徴で、お金に好かれる人のエッセンスは感じて頂けると思います。
それでは、今回のテーマの「お金の使い道、使い方を集中させる」について説明させて頂きたいと思います。
まず、今回の方法でお金持ちになっている人は、企業経営者でも芸能人でもスポーツ選手でもありません。
いずれも、いわゆる”サラリーマン”や”サラリーウーマン”でした。
彼らは、とても経済的にも時間的にも豊かに見えるような”肩書き”ではありませんでしたが、実際のところは、金融資産でかなりの資産を保有する資産家でした。
では、例を挙げて、その例を見ていきましょう。
今回は、サラリーマンのAさんを取り上げてみたいと思います。
彼は自他共に認める「ゲームおたく」でした。
彼はゲームをプレイすることが大好きないわゆる「ゲームおたく」なのですが、彼はそれに加えて、”アタリ”のゲームを見つけることにも非常に長けていました。
”アタリ”を見つけるというのは、家庭用ゲーム機でのゲームから、携帯でのゲームなど数あるゲームの中から”ヒット”しそうな(売れそうな)ゲームを見分けるのが極めて得意ということです。
つまり、彼はゲームをプレイするだけでなく、ヒットしそうなゲームを見つけることそして、数多くのゲームをプレイし、そのゲームを作っている人、制作している会社、人やチームなどの情報を収集することにも長けていたのです。
そして、彼は自分のその判断力を信じて、ゲームやゲーム機器を作っている会社に投資を始めます。
彼の卓越した選球(社)眼は、自らのゲームへの好奇心と、それを制作している会社や人の情報を収集することでさらに強化され、驚異的な投資成績に繋がっていきました。
彼の驚異的な投資成績を裏付ける資質には、ゲームへの飽くなき好奇心の他に、例えば、任天堂が業績悪化に陥る前には、高値で売り切り、その後の円高を見越して、買いポジションを閉じるなどの冷静なビジネスセンスも持ちあわせていました。
彼は、決して有名ではない企業で一人のサラリーマンとして働いていますが、ゲームが好きな他に、ゆとりある生活を送ることができる豊富な資産と、奥さんと子供にも恵まれ、とても幸せな家庭を築いています。
筆者は彼との対面で印象に残ったのは、非常にソフトな語り口と、どこか深い自信を感じさせる慎重な話しぶりでした。
そして、彼は、これまでの成功について、筆者にゆっくりと語ってくれました。
その中から筆者が幾つか、興味深いと感じた発言を紹介したいと思います。
筆者「成功できた最も大きな要因は何ですか?」
Aさん「自分の得意な分野に集中した結果だと思います。私には得意といえる分野は、ゲームしかありませんでしたから。」
筆者「でも、Aさん以外にもゲーム好きな人ってたくさんますよね?どうしてAさんは、成功できたのでしょうか?」
Aさん「私よりゲームが好きで上手い人は本当にたくさんいます。ただ、”ヒット”しそうなゲームをユーザー目線で徹底的にフラットに見ることができる人ってあまりいなかったこと、そして運が良かったからだと思います。」
筆者「つまり、ゲーム好きな人は、感情移入してしまって客観的でない人が多いということですか?」
Aさん「それもあると思いますが、大人も子供も自分の気に入ったゲームしかプレイしなくなるので、”良さ”を過剰に評価したり、その逆だったりすると思うんです。」
筆者「つまり、ゲーム業界全体の中で一つのゲームが相対的にユーザーにどう評価されることまでは考えないということですか?」
Aさん「そうですね。ヒットするゲームって、色んな要素があると思うんですけど、例えば人気のゲームが数多く出る年に、中小のメーカーが”良いゲーム”を作っても、そこそこしかやっぱり売れないんですよね。逆に、全体的に不作の年に、そういうのを出せれば、大ヒットまではいかなくても、かなりの結果につながったりします。」
筆者「集中について聞きたいのですが、なぜ、ゲームだけにこだわってきたんでしょうか?例えば、読書やスポーツなどは興味がなかったのですか?」
Aさん「本は好きですよ。投資に関する本や小説なんかもよく読みます。ただ、気が向いたら移動時間に読む程度ですね。スポーツは正直なところ、全然ダメです…(笑)」
筆者「ゲーム以外に興味があったこととかありますか?」
Aさん「貯金ですね。もともと小さいときから、あまり体が強くなくて…社会でバリバリ働くのは無理だと思っていました。実際、社会に出てから、体を壊して会社を辞めた経験もあります。そういった心配もあって、小さいときから、貯金はしてました。」
筆者「貯金とゲームに投資を加えようとしたのは?リスクがありますよね?」
Aさん「リスクについては、それほど感じていませんでした。投資を始めたのはヒットしそうなゲームを抱えているのに、株価が全然、動いていないのを見て、これはおかしいと思ったからです。その会社の株を買おうと思った時点ですでに、色々な指標から考慮しても安かったですし、現金で置いておいてもしばらくは使う見込みのないお金でしたので、それほどリスクだとは思いませんでした。」
筆者「その時は、どうなったんですか?」
Aさん「5倍以上にはなりました。」
筆者「その後も、同じような感じで投資を?」
Aさん「そうですね。据え置き型ゲーム機のソニーや任天堂から携帯のグリー、DeNAまでカバーする範囲は広がりましたが、基本的には、投資に対する考え方は同じです。」
筆者「失敗はありませんでしたか?」
Aさん「ありますね(笑) 任天堂なんかは為替リスクがあるというので、あるとき任天堂の株を買って、ヘッジ用にユーロを買うという投資をしたことがあったのですが、任天堂の株では損をしなかったのですが、ユーロでかなりの損をだしてしまった記憶があります。」
筆者「ユーロが大きな値動きを?」
Aさん「そうですね。慣れないことをするものじゃないということを痛感しました(笑)」
筆者「他には失敗はありますか?」
Aさん「投資していた会社が、不正で訴えられてとか…粉飾決算で…とか色々ありました…。」
筆者「損切りはしますか?」
Aさん「自分が予想し得ない事が起こったときは、すぐに売りますね。一応、決算報告書などは見ますが、不測の事態の前では、どうしようもありませんので…」
筆者「なるほど。ゲームと投資について、家族はどう思っていますか?」
Aさん「理解をしてもらっています。ゲームをする時間と、投資をすることが自分の人生では欠かせないと結婚前に説明しています。ただ、結婚後は、子供もできて、楽しくなったのですが、自分の時間は経る一方です(笑)」
筆者「どうもありがとうございました。最後に、何かこちらのページを御覧頂いた方にメッセージはありますか?(筆者が事前に趣旨を説明しました)」
Aさん「私はこれまで、大人になると、小さなときに持っていた”こだわり”をすっかり忘れてしまう人を数多く見て来ました。私は投資と運に助けれられたところも大きいのですが、自分が関心があることで、取り組み続ければ、投資に限らず、チャンスはいつでもあると思います。」
【まとめ】
いかがでしょうか?筆者は彼のゲームに対するこだわりはもちろん、その他のことに手を出さない勇気が素晴らしいと思いました。筆者も儲かりそうということで、投資をして失敗したことが何度もありますが、投資で儲かったりすると、ついつい自分がよく分からない分野でも投資したくなる欲望に駆られます。そして、失敗していまいます。
ビジネスにおいて、選択と集中は非常に重要だと思いますが、自分が好きな分野に集中すること、そして、その輪を少しずつ広げていくことがいかに大きなチャンスになり得るかということを彼は教えてくれています。
ウォーレン・バフェットはかつて
「株式市場では空振り三振はない」
なんて発言をしていましたが、自分の好きなボールにしか手を出さない勇気。これは市場の真理であり、そして、お金に好かれる重要なエッセンスなのかもしれません。