人が話を始めるときの「最初のキーワード」は、その会話の中身の印象を作るとっても大事な「キーワード」になります。
私たちは、小さい頃から、国語の授業などで話をするときは「起承転結」を考えて話しなさいと言われてきました。
しかし、この「起承転結」はいつでも当てはまることでは決してありません。むしろ、口頭での会話というコミュニケーションにおいては、最初に「結」を持ってくるぐらいの方がスムーズになることが少なくありません。
早速、事例を挙げてみてみましょう。
私が企画したある飲み会で、あるカップルがつきあい始めることになりました。最初はそれはそれは仲が良かったのですが、つきあって数週間経過した頃から、喧嘩が絶えないようになってきました…。
私は双方の言い分を聞いていたのですが、その原因がどうも私が以前から気になっていたことだったんです。
それは彼女の口癖で、決して彼女には悪気はないのですが、会話のところどころで、会話の切り出しで
「いや・・・○○なんですよ。」
「ていうか、○○なんですよ。」
などを使っていたことです。「いや・・」「ていうか・・」の後の内容がもっともだという内容ならば、確かにこちらもなるほどとなるのですが、よくよく話を聞いてみると、どうも切り出しの「いや・・」「ていうか・・」と後の話の中身がちぐはぐなのです。
これは、聞き手としては、それだったら、切り出しに「いや・・」「ていうか・・」などという言葉を使うのはあんまり意味ないんじゃ・・・と思ってしまい、違和感を感じてしまいます。
私がうっすらと感じていたこの彼女の口癖がどうも、喧嘩のもとになっていたらしく、その後、彼氏はその口癖を指摘して、彼女もそれを修正したことで(もともとも悪気はなく、本当にただの口癖だった)、喧嘩もめっきり少なくなり、また仲良しカップルに戻りました。
その後も、そのカップルとは家族ぐるみのつきあいですが、今では結婚し、幸せな家庭を築いています。
上のカップルは、彼女がその口癖を修正したことで、その後も順調に交際を重ねてハッピーな展開でしたが、では、その彼女が口癖を修正する気がなかったり、彼氏が指摘せずに、そもそも修正することすら考えなかったら、どうだったでしょうか?
恐らく、喧嘩別れとはいかなくとも、今のような関係が続いていたとは思えません。
つまり、彼女が会話の切り出しに使っていた言葉が、大げさに言えば、二人の運命の鍵を握っていたのです。
確かに、私自身、これまで毎週のように知らない人と話をすることを何十年と続けてきましたが、会話の冒頭に否定的なニュアンスの言葉を頻繁に使いたがる人には、違和感を感じずにはいられませんでした。周囲の印象も同様のことが多かったです。
さらに、たちが悪いのは、相手とのコミュニケーションを計ろうというよりも、相手の話を否定したいがために、とにかく冒頭に否定的な言葉を持ち出す人です。
故意にしろ、そうでないにしろ、冒頭から否定的な印象の言葉を持ってくることは会話をスムーズに進めるには、決して得策ではありません。
ですから、例えば、否定的なことを伝えなくてはいけないときは、まずは先に、同意できるところや賞賛できるところを先に挙げて、その後に、伝えるべきです。
私がよく使うのは、会話を振られると
「○○さんが仰った□□については、全く仰る通りで賛成です。ただ、△△については、慎重に検討を重ねてみてもいいかもしれません」
「○○君がやってくれた□□は素晴らしい仕事ですね。さらに良くするためには、△△については、もっとこうした方がいいかもしれない」
のような感じで話を進めます。
面倒くさいと感じられるかもしれません。しかし、人は感情のある生き物です。相手のことを思って、話を構成するのは、愛情のある証拠です。
そして、愛情のこもった会話ができる人は、当然ながら、人に好かれやすいものです。
否定的な話を切り出しに使わないように心がけ、そしてそれを実践するだけで、会話はさらにスムーズに進めるようになり、もっと人に好かれる話し方ができるようになると思います。