人に好かれる話し方をするためには、まず聞き上手であることが大切であることは、このサイトでも何度か触れていますが、その「聞き上手」に加えて、「好かれる話し方」を一挙に実現できてしまう最も効果的な方法に「相槌・頷く」があります。
相槌という言葉の語源は、江戸時代の鍛冶職人から来ているそうで、何でも二人の職人が交互に「会槌(づち)」を打ち合わすことらしいです。「槌(づち)」を打ち合わすというものがどれほど技術のいる作業かは素人の私には分かりませんが、現代のコミュニケーションで絶妙な「相槌」を打てる人は、人に好かれる話し方ができるコミュニケーションの職人に違いありません。
まず、良い相槌を打つには、聞き上手である必要があります。
話をよく聞き、その内容に沿った相槌や頷き方をするためには、相手の話に耳を傾け、話の趣旨を理解し、相手の話の本質を見抜くことが必要になるからです。
早速、分かりやすい例を挙げてみます。
あなたの周りにもいなかったでしょうか?
周囲の人が何かを丁寧に説明しても
「はい。はい。はい。はい。はい。」
とにかく、「はい」を連呼して、まるで私はその話は分かっていますよということをアピールする人。
説明している側からすれば、「ちゃんと聞いているのかしら?」と思いますよね。
すると周囲の予想通り、そういった人はまた、同じ失敗を繰り返したりします。
ここで重要なことは、失敗を繰り返すことでしょうか?もちろん、それもあるかもしれませんが、周囲の人が最も気にかけているのは、こちらが丁寧に説明しても、テキトーな相槌を打って、話を聞く気がないというところです。
つまり、行き着くところは、テキトーな相槌を打つ人には、周囲の人がどこかで愛想をつかして、説明すらしなくなってしまうことです。
「愛情の反対は、無関心である」なんていう名言がありますが、ビジネス社会でもプライベートでも、叱ってくれたり、慰めてくれたり、「何か」の言葉をかけてもらえるというのは、まだ愛情がある証拠です。むしろ、本当に「冷めて」しまうと、人は無関心になってしまい、言葉すら欠けなくなってしまいます。
上のような例はきっと、誰もがどこかで見たり、聞いたりしたことがあるのではないでしょうか。
では、上の例とは逆に、相槌を打つのが上手な人が人に好かれ、声をかけてもらえるのは、少なくとも相手の話に耳を傾けようという気持ちが伝わるからです。
説明をする側も、時間と手間をかけて、そして何よりその人や周囲の人のことまでいろいろと思って、説明をしているわけです、仮に多少不器用なところがあっても、ちゃんと話を聞いて、相槌を打ってくれる人には、すぐには愛想をつかしたりすることはないでしょう。
では、どんな相槌を打つのがいいのでしょうか?これは正解があるわけではありません。自分のパーソナリティと相手との関係性で引き出しを用意していくしかありません。
例えば、私が、よく使うのは、これらの言葉です。
「ええ、そうですね」
「ええ、はい」
「なるほど。」
「おぉ。すごいですね!」
「本当ですか!」
「面白いですね」
「さすがですね」
「おっしゃる通りだと思います」
「全く同感です」
「とても刺激的ですね」
「とても考えられていますね」
「とても興味深いですね」
「とても示唆に富んでいますね」
「勉強になります」
厳密には相槌と呼べないものもあるかもしれませんが、相手が話されている話に対して、同じ相槌を続けるのは、単調で会話にリズムがなくなりますし、だからと言って、あまりに長かったり、難しい言い回しですと、相手の会話の流れを変えてしまいかねないので、注意しています。
また、それらのキーワードを使う際に意識しているのが、「共感」です。
自分が、強く共感を感じられるところは、多少大げさに聞こえるかもしれませんが、目上の人であれば、「おっしゃる通りですね。私も全く同感です」なんて相槌を打ったりします。
また、目上の人か、あるいは年下の得意先の担当者か、社内の人か社外の人か、女性か、男性かなど、その人の境遇と関係性にも気を使います。
得意先の担当者であっても、年下の人は、あまりに大げさな相槌はこっちがそのつもりでなくても、気を使わせてしまったりすることがあるので、わざと少しフランクに相槌を打ったりもします。
例えば、目上の人であれば、「おっしゃる通りですね。私も全く同感です」と相槌を打つところを年下の得意先の担当者であれば、「おぉ、それはスゴイ!ですね。おっしゃる通りだと思いますよ」に変えたりします。
ある程度の人間関係が作れていることが前提ですが、あえてフランクに接することで相手との関係性をより強固にすることができたりします。
「相槌を打つ」をじっくり考えてみることは非常に価値のあることだと思います。