部下との人間関係から考える転職・退職

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先に筆者は、人間関係が原因で仕事を変えたり、退職したりすることに否定的ではありません。
むしろ、一度きりの人生において、長い間、人間関係に悩まされながら、仕事をして過ごしていくぐらいなら思い切って、職場を変えたり、起業したりして働く環境を変えることに大賛成です!

それでは、早速、今回のテーマである部下との関係が原因で転職や退職を例を挙げて考えていきたいと思います。

私のある知人Sさんは、大学卒業後、ある地方にあるメーカー系の中堅企業に入社しました。しかし、就職氷河期ということもあり、同期はたったの2人。

しかも、その2人も「給料が安い」、「先行きに不安を感じる」と、それなりの理由を見つけて、数年経つと転職していなくなってしまいました…。

Sさん自身も転職を考えたこともありましたが、同期3人の中では、上司からも好かれ、評価してもらっていたこともあり、新卒で入社したその会社で頑張っていました。

ただ、会社の業績は不景気の影響もあり、Sさんの奮闘とは裏腹に緩やかに右肩下がり…。

企業の業績悪化に伴い、経費削減が叫ばれ、リストラはもちろん、新卒や途中入社もSさんの入社後はパタリと止まってしまいました。

しかし、そんな厳しい時期を乗り越え、ようやくSさんの勤める企業の業績が底を打ち、回復途上に入ると、今度は業績拡大に伴い、人材を増員することに。

当然、Sさんは、中堅社員として期待され、部下数名を抱えるほどになりました。

ところが、ここからが問題でした。Sさんは、社会に出てからというもの、「部下」を持ったことがありません。つまり、上司という立場に立ったことがありません。

これまでは信頼出来る上司のもとで必死になって業務に取り組んできましたが、新卒や途中入社組に仕事を教えて、働いてもらい、それを管理するというのは、全く別の仕事です。

もともと、人に厳しくあたることが苦手なSさんは、戸惑いの連続でした。何度説明しても同じミスを繰り返す新卒、Sさんの言うことを聞かない途中入社組、などなど。

悩んだSさんはこれまで信頼していた上司に相談し、アドバイスをもらいましたが、部下との関係は一向に改善しません。

人間関係についてのアドバイスは、人間性ありきのケースが多く、簡単にマニュアル化できるようなものではありません。

Sさんの悩みは深くなるばかりです。それに加え、Sさん自身がこれまで得意してきた仕事にまで影響が出始めて、悩みはさらに深刻さを増していきました…。

筆者がSさんに初めてお会いしたのは、そんな時でした。

筆者はこれまでのSさんの話に慎重に耳を傾け、Sさんが発する心のメッセージを掴もうとしました。

そして、筆者がSさんに出したアドバイスは

「転職」

でした。

Sさんは、タイミングなのか、運だったのか、社会に出て部下を持つことなく、働いて来ました。それはある意味では、「ラク」なことでした。なぜなら、自分の仕事に専念できたからです。

しかし、部下との人間関係を作る機会がなかったことが、実は社内でも社外でも彼の仕事の質を高め、高い評価を得るに至っていたのです。

スポーツの世界に

「名選手=名監督にあらず」

という言葉があります。

まさに、Sさんはこのタイプでした。

管理者としては、決して能力の高いSさんではありませんでしたが、得意分野の仕事では高いパフォーマンスを発揮するプレイヤータイプの人だったのです。

その後、Sさんは、仕事の腕を買われて、同業種では大手の企業へ転職を果たします。

そして、その企業では以前のSさんのように、華々しく活躍中です。

ここまで読まれてきてお分かりかと思いますが、部下との人間関係で悩んで、本来の自分の力が発揮できていないのであれば、それは、職業人としての生き方を考えてみてもいいかもしれません。

そして、人間関係が原因で転職、退職を考えるというのも、貴重な選択肢の一つである可能性があります。

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